芸術は、世界中どこに行っても通用するコミュニケーションツール。感性が豊かな中高生時代にさまざまな芸術に触れ、また自ら体験することで、心が育まれる。
教科の枠にとらわれず幅広い教養を身に付ける、いわゆる ‘ リベラルアーツ ’ を実践する本校では、一般的な進学校では軽視されがちな芸術を「国際人としての豊かな感性を育む機会」と捉えている。
通常の芸術の授業に加え、中学2年次には毎週土曜日の3・4時間目に全員が「選択芸術講座」を受講。音楽では声楽、クラシックギター、ヴァイオリン、フルート、リコーダー、クロマチックハーモニカ、美術では絵画、陶芸、木工、書道、さらに総合芸術として演劇の講座が開講される。
芸術科の専任教員に加え、外部から招いた各分野の専門家が務める。 絵を描いたり楽器を演奏したりという技能を高めることを目指しているのではない。育てたいのは、感じる心。専門家に教わり ‘ 本物 ’ に触れることで子どもたちの心は大きく動き、実際に自分でやってみることで五感が刺激される。
言語を通して理解するのとは異なる方法で吸収するという体験を、情緒豊かな中学2年生の時期にできることには、大きな意義がある。
木工の講座を担当する渡邉(美術の専任教諭)より
ノミなどの工具の使い方を知らないどころか見たことがないという生徒も少なくなく、過去には工具の使い方を誤り数針縫うケガをした生徒いました。ドライバーでネジを留められない子やカッターナイフで鉛筆を削ったことがない子もいます。それだけ今の子どもたちには生の体験が不足しているんです。
校長に、必ずケガが起きるが、それでもよければ(木工の講座を)やらせてほしいとお願いしたところ、それでもいいからやってほしいと言ってもらいました。ケガをするという経験も含めて、自分でものを作ることで得られる学びは大きい。中学受験のために小学校時代から勉強ばかりしてきた生徒たちにとってはとくに、必要な経験だと考えています。
講座は20人以下の少人数制で行われ、音楽系や演劇は講堂で発表会を開き、美術系は聖光祭で作品を展示する。こうした講座のあり方も、生徒らの気づきや成長につながっている。
通常のクラスは46人なのでどうしても一人ひとりに目が届きにくいのですが、20人だと教員との距離感も生徒同士の親密度もまったく違ってきます。また、他の生徒の作品に触れることで、これまで知らなかった一面を発見するという機会にもなっています。選択芸術講座を通して、物事にはこういうアプローチの仕方もあるのだということを感覚的に体験できたら、将来、いつかどこかで必ず活きてくる、そう思います。
なぜ大学に進むのか、何をやりたいのか、どんな人間になりたいのか。大学進学のために、ただ受験勉強をさせるのではなく、そういう幅や厚みを増す経験、考える機会を大切にしているんですね。
今回の記事は、選択芸術講座のほんの一部です。社会に貢献できる紳士を育てること、根底にあるキリスト教の祈り、変わらないものを大事にしながら、これからの時代に対応していく様々な取り組みを、これからも紹介していきたいと思います。
【1】脱・進学校と東大合格者数の上昇Tweet